警察官になるためには柔道や剣道などの武道が必要なのか?

警察官の剣道と柔道

リクストリーム管理人の元警察官・桜井陸です。

よく警察官志望者の方から「柔道や剣道などの武道をしたことがないんですが警察官になれますか?」というご質問を受けます。

答えから言うと事前に段位等の取得は全く必要ないです。

警察庁のHPでも『義務教育の間しか柔道・剣道経験がない人がほとんどですが、教官の丁寧な指導によって卒業までに初段を取得できる人がほとんどです。』と記載がありますが、これが真実です。

また、警察学校では柔道か剣道を選択しますが卒業した後でもコース変更可能なので警察人生を大きく左右することはありません。

剣道や柔道ができればもちろん良いんですが、警察官になる前から武道ができる人なんてほんの一握りなんで安心してください。そこで今回は柔剣道コースの違いや選択する際の注意点を説明します。

警察学校で柔道、剣道のどちらか武道を選択

柔道や剣道等の武道はどちらかを警察学校で選択します。(警視庁は合気道もあり)

学校では武道の訓練を術科と呼びます。

剣道コースについて

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剣道コースのメリットとデメリット

メリット

比較的段位が取得しやすい

怪我が少ない

練習が激しくない

力がなくてもある程度まで上達できる

デメリット

実戦で使えない(後で説明します)

防具が高い

冬場の訓練で足が冷える

防具の着装が面倒

柔道コースについて

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柔道コースのメリットとデメリット

メリット

防具代が不要(胴着のみで練習可能)

実戦で使える(後で説明します)

昇任試験で有利(後で説明します)

デメリット

怪我が多い

段位の取得が困難

警察官に柔道・剣道などの武道が必要な理由

ではここで武道の説明をする前に、警察官になぜ段位の取得が必要なのかを理解する必要があります。特に近年は精強な警察官が求められており、新人の間は訓練等への参加が半ば義務付けられています。

これはなぜかというと2005年2月19日、暴れる被疑者を見た警察官が一目散に現場から逃走する様子がマスコミに撮影され、当時の首相が激怒したことにあります。

参考記事『警察庁長官が首相の苦言に謝罪…パトカー強奪未遂事件』

この事件を受けて、制圧できない警察官は不必要ではないかと大きな批判を浴び、武道訓練の強化や逮捕術、そして柔剣道が強化された経緯があります。柔道や剣道が強い、弱いというのを公的に証明するためにも段位の取得が必要となったわけです。

なのでこの趣旨を理解していなければなぜ武道を練習するのかも理解できず半人前のまま過ごすことになります。

警察官は犯人を制圧しなければならない、だからこそ武道訓練をするという意義を理解する必要があるのです。

剣道のデメリット解説

ではここで剣道のデメリットを説明します。

剣道は何よりも初段が取得しやすいです。

上で説明したように警察官は有段でなければ現場でも使い物にならないという考えなので、初段を早く確実に取るなら剣道一択です。防具も高いとは言っても給料から天引きですし、警察学校在学中ですので懐はそこまで痛みません。

剣道の防具は高い?

ちなみに価格ドットコムで剣道防具を最安値で検索したところこの2点がヒットしました。

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このように3万円も出せば防具は揃えられます。楽天最安値の防具セット

ちなみに僕の同期はネットで最安値の防具を購入して何の問題もなく昇段しました。

安いからといって壊れることもありませんし、警察学校を出ればそこまでフル活用することもないのでこれでも十分ということです。

ただ剣道場は絶対に板間なので、柔道に比較して剣道は冬場は足が非常に冷たいです。また防具の着装は慣れるまではかなり面倒です。

剣道と武道

面タオルを頭に巻いた上に面を付けるのを一斉に行うのですが、1人でも遅いとみんなが正座したまま待つことになるのでプレッシャーです。

剣道は礼節に厳しい武道なので袴(はかま)や防具の乱れは先生に指導されます。僕は練習よりもこの防具の着装が一番嫌いでした。

そして署で武道訓練の日は剣道の防具を毎回持ち運ぶことになります。(署は狭いので置くスペースがない所が多い)

通勤ラッシュの中、大きな防具を電車で運ぶのはなかなか苦痛でした。

この記事は要チェック→警察学校の必需品とは?

剣道は防具の着装が大変

不器用な人は特に剣道の防具を付けることに最初は戸惑うと思います。周りでも面がなかなか付けることができず焦っていた同期が数人いました。剣道有段者にコツを聞くとタイムウォッチで時間を計って正確に早く装着する練習をした方が良いと言われて、警察学校の寮で1人、時間を計りながら面を付ける練習をしたこともあります。

あと面タオルも付けるのに苦労します。面タオルの締め付けが緩いと面を着装したあとにズレてくるので、練習中に防具が不細工なことになると少し怒られることもあります。

なので剣道初心者は防具を着装する練習と面タオルを付ける練習は必須です。防具を買った時は下の動画で練習してみるのも良いでしょう。

柔道は実戦向き

柔道は怪我をしやすいのと、昇段審査が勝敗で決まるので実力がなければ段がとれないのがデメリットです。

警察官は必ず有段を求められるのでプレッシャーも大きいのです。

 

ただ柔道は実戦向き剣道は実戦に向いていないのが一番の違いでした。

僕は繁華街で勤務していたので荒れた現場も多く犯人とつかみ合いになったことも多いです。

そして僕は剣道コースだったので柔道の技を知らなかったばかりに制圧に苦労したことを覚えています。

先輩が背負い投げで犯人を投げて手錠をはめるのを見て「技を知っていると強いなあ」と実感しました。

警察学校と柔道

警棒を抜いて相手を殴る事案は恐らく警察人生で起こらないと思いますが、暴れる犯人や酔っ払いを制圧することは多々あります。

その時に自分1人でも相手を投げて抑え込む技を知っているとかなり有効です。

 

また昇任試験でも柔道は有効です。

警察官の昇任試験は勉強だけでなく武道も必要なため、受け身ができないと試験日までに特訓する必要があるのです。

剣道コースは受け身などしたことがほとんどないので、みんな仕事の合間を縫って練習します。僕も早朝に署の道場で1人で受け身の練習をしました。

警察学校で剣道と柔道のどちらを選択するのがお薦め?

よって、剣道と柔道の差はどちらがお薦めというよりも「現場で使えるか」「昇段しやすいか」が選択する基準です。

警察学校にいればお金を使うこともありませんし、防具代など微々たるものです。あとは柔道で実戦的な技を覚えるか、剣道で早く段を取るかの2択になります。

ただ署に出ればコースは変更できるので、定年まで同じ武道を選択し続ける必要はありません。

逮捕術について

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逮捕術に関してはボクシング、空手、日本拳法経験者などの立ち技はかなり有利です。逮捕術は徒手空拳で戦う競技で日本拳法にスタイルは似ています。

間合いを取って効果的に殴る技術は一朝一夕で身に付くものではないので、たとえ半年でも経験していると無双できます。

 

また武道で要注意なのは眼鏡は付けられないということです。

中にはメガネをして剣道したり逮捕術している人もいるかもしれませんが、僕は周りで見たことありません。

僕は視力が悪くてハードコンタクトをしていましたが、逮捕術や剣道の前は使い捨てのソフトコンタクトにしていました。

剣道や柔道の授業は毎日あるのか?

柔道や剣道、逮捕術などの訓練は毎日あるのかと思われがちです。

でも授業は全てカリキュラムで決まっているので毎日朝から晩まで訓練というわけでもないのです。

こちらの表をご覧ください。(参考例:埼玉県警)

警察官の柔道と剣道は選択

警察学校ではこのような一日になっていて、中学や高校と同じように授業科目が決まっています。

決められた時間割通りに履修するので柔道・剣道も時間内(80分)で授業は終了です。

鬼のように厳しいわけでもなく、先生が基本から教えてくれるので意外と楽しかったです。

 

また卒業までに段位が取れなかった場合もクビになることはありません。(講座受講生の中でも数名いました)

柔道コースは実戦的な武道、剣道コースは礼節を重んじる武道なので体力に自信がない人は剣道を選ぶ方が身体は楽でしょう。

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こちらは僕が実際に使用していた剣道の防具と逮捕術の胴着です。逮捕術で使用していた黒帯も白く剥げていますし、面も年季が入っているのが分かると思います。

特錬員について

警察官でも柔道や剣道で採用される人を特錬員と呼びます。こちらは埼玉県警の特錬員採用です。

段位は3段以上と想像よりハードではないように感じますが、実際は段位だけでなくこれまでの実績も加味されるようです。特に柔道や剣道の世界は有名選手の名前は広まりやすく、過去にも有名選手が警察官になった実績も多いです。

また大阪府警は警察の中でも武道が強くて有名です。全国の警察武道大会でも3連覇するなど他の自治体の追随を許さないほどの実力を持っています。特錬はここに選抜されるのですから猛者ぞろいなのはお分かりいただけるかと思います。

警察学校の柔道と剣道についてまとめ

・警察官になるために柔道や剣道を前もって習得する必要はない
・剣道の方が昇段は簡単だが現場で使えるのは柔道
・警察学校では武道初心者でも親切に教えてもらえる
・柔道コースから剣道コース、剣道コースから柔道コースに変更可能
・特錬員に選抜されるのはかなり難しい

以上となります。またご質問などありましたらいつでもコメント欄へご記入ください。

続いて【警察官の仕事内容・やりがいや警察学校の実態を公開します】の記事へ

8 件のコメント

  • 本当に剣道しないでも警察官になれるんですか?
    補導歴があってもできますか?

    • 警察官採用試験の合格条件が武道経験者ならば恐ろしく狭き門になります。
      特に高校卒業時点で剣道等を経験している人は回りを見てもほとんどいないでしょう?
      大丈夫です。
      補導はプラスにはならないとだけお伝えしておきます。

  • 高校2年です。高卒程度で合格目指してるんですけど、高校1年の時に剣道三段に昇段しました。実際これってどれくらい有利になるんですかね?持ってたらすごいよ!って言われるけどどれくらい有利なのかとかわかんないんです

    • 段位だけではなく、面接ではこれまでの取り組みも評価されるので全く関係無いとは思いません。
      警察学校に入校してからは所作等はある程度、役立つと思います。

  • こんばんわ。現在大学1年の女子です。
    将来警察官になりたいと思っていて、武道を習うことにしたのですが、女性は合気道という選択肢もあると聞きました。これはどこの警察でも同じなのでしょうか?また、警視庁や大阪府警はやはり猛者が集うものでしょうか?
    お手隙の際にお返信頂けると幸いです。
    よろしくお願い致します。

    • はじめまして。警察官は武道が大切。私もそのように考えていました。
      4月24日の動画ではその点を詳しく解説しますので、ぜひユーチューブをご覧ください。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    ・就職氷河期時代、3年間の公務員浪人を経て警察官採用試験に合格。 採用後は同期内最速で刑事課に引き抜かれ、代表的な出世コースに乗る。 刑事部長褒賞、地域部長褒賞、交通部長褒賞、署長褒賞など受賞歴多数。(賞状はプロフィールページに掲載) ・初任科、初任補修科を経て地域課(地域第3係)へ初任配属。 ・初任配置先の交番が高級住宅街で事件・事故の発生が毎日0件という平和な勤務地であったため、仕事が覚えられずに焦る→最多忙な交番へ異動希望を出す。 ・異動先の交番は歓楽街のど真ん中にあり、深夜でも大きな事件が発生する『不夜城』として警察24時でも頻繁に紹介される勤務先であった。 深夜2時に『10対15の喧嘩発生』という意味不明な無線を聞き、戦慄が走った思い出。 ・交番勤務時代は老若男女問わず地域住民が交番に訪れ、幹部から「行列のできる交番」と揶揄される。 ・警察官になり昇任試験に合格し、自分のやりたかった仕事も完遂して燃え尽き症候群に陥り退職。 (ちなみにプロフィール写真は巡査部長に昇進したあと、退職前に記念撮影したものです。) ・転職したとき、アラフォーながらGAFAからオファーを貰う。 ・警察官退職後は大手企業(ホワイト500認定企業)の人事課に転職、採用担当として活躍。DODAやリクナビ、エン転職など各媒体を駆使して採用率を大幅に向上させる。 ・現在も人事課で採用担当として勤務し、現役大学生からシルバー世代まで幅広く面接を行っている。 ・人事課では採用以外にも、優良子育てサポート企業として『プラチナくるみん』認定取得のために会社を構造改革中。 ・所定外労働(残業時間)を削減するため全部署の労働時間を常に可視化するツールを導入し、大幅に削減させたことから労働基準監督署の監督官から賞賛される。 ・『警察官になる前に学んだ知識』と『警察官として働いた間に蓄えた経験』『実際に人事課で勤務した経験』をミックスさせた警察官採用試験対策は1年で数十名の合格者を輩出。 ・顔出しなしの講義YouTube動画で異例のチャンネル登録者20,000人突破。 ・ツイッターは1日1回のツイート、フォロー0人でフォロワー1,000人突破。 ・40代、既婚、大阪市居住。 ・2017年から警察官採用試験対策を開始。合格実績としてプロボクサーや現役自衛隊員、転職歴多数者、元警察官、フリーター、工場勤務者など様々な経歴を持つ受験者を合格に導く。 ①『30代の女性は警察官になれない』というネット上のデマを払拭するため、30代の女性受験者を集めて合格に導いた実績 ②テレビに出演する有名な元警察官(警部級)のコメンテーターから『君は警察官にはなれないよ』と言われた受験者を合格に導いた実績 この①と②の実績を公表してネットに大きな反響を与える。 当サイトの情報をコピーペースト等して二次利用することは固く禁じておりますが、リンクはフリーですので参考になる記事がございましたらご自由にリンクを貼ってください。