【警察学校はどれくらいの期間入る?何をするの?】ここだけの話をします

警察学校の入校について

ブログ管理人の元警察官・桜井陸です。

今回は警察学校の入校期間の長さ(大卒・高卒別)と入校中に何をするのかを解説します。

入校したら家に帰ることができない理由警察が実施する就職説明会で絶対に聞けない話も公開します。

最後までご覧いただけばきっと警察学校の真実が分かるようになっているはずです。

【警察学校はどれくらいの期間入る?何をするの?】ここだけの話をします

まず初歩的な話ですが、警察学校に入校するのは警察官採用試験に合格してからです。

たまに

警察志望者さん

警察学校に入って勉強をしてから警察官採用試験を受験するんですよね?

というご質問を受けるのですが、それは誤りです。

警察官採用試験に合格した後に入校するので、警察学校に入校したとき身分はもう警察官です。

高校卒(長期過程)の警察官が警察学校に入る期間

高卒の警察官は警察学校に10か月入校します。

例えば4月に入校すると卒業するのは翌年の1月です。

長いようで短く、卒業間近の先輩は

先輩警察官
いざ卒業するとなったら現場に出たくないわ。学校生活が楽しかったからなあ

と言っていました。

高校を卒業したばかりで社会経験がない10代の警察官も訓練に慣れ、仲間との絆が深まってきた頃に卒業するのは辛いのでしょう。

大学卒(短期過程)の警察官が警察学校に入る期間

大卒(短期過程)の警察官は警察学校に6か月入校します。

例えば4月に入校すると翌年の9月に卒業です。

僕は大卒区分で入校したのですが、いま考えるとあっという間でした。

学校はとにかく行事が目白押しで、やることが多く気付いたら季節が変わって制服も衣替えになります。

警察学校の入校期間の長さについて

高卒警察官は入校期間が6か月、大卒警察官は入校期間が10か月と先ほど説明しました。

確かに大阪府警のホームページを見ると入校期間は

入校日には、担任教官から名札を受けとり、辞令交付式で正式に大阪府巡査を拝命して、短期課程6か月、長期課程10か月の学校生活が始まります。 出典:大阪府警察HP

と記載してあります。

そして警視庁のホームページにも

警視庁警察官に採用され、警察学校に入校して初めて受ける教養・訓練を初任教養と言います。期間は、1類採用者で6ヶ月、2、3類採用者で10ヶ月間です。 出典:警視庁HP

と記載してあり、やはり大卒警察官は6ヶ月間、高卒警察官は10ヶ月間の入校だと分かります。

では次にこちらをご覧ください。

警察学校に入る期間について大卒、高卒に分けて説明しています。

これは長野県警のホームページをまとめたものですが、教養期間がかなり伸びているのが分かりますか?

大卒が15ヶ月、高卒が21ヶ月と公式に発表しています。

話が全く違うので意味不明になる人も多いようです。

警察官志望者
どういうこと?
大阪府警や警視庁は入校期間が短いの?

警察官志望者

ただでさえ不安なのに、これじゃ何を信用していいか分からないわ。

分かりました。

それでは今から警察官採用試験に合格し、警察官に採用された後の流れを分かりやすく解説します。

大阪府警や警視庁の警察学校は特別?

まず、先ほどの図をごらんください。

高卒の場合は初任科で10ヶ月、大卒の場合は初任科で6ヶ月と記載されています。

これはどういうことかというと、高卒は10ヶ月、大卒は6ヶ月したら警察学校を卒業して現場に出るのです。

大阪府警や警視庁だけでなく、どの自治体の警察学校も基本的に同じシステムです。

テレビでよく見る感動の卒業式が行われ、学生は涙ながらに教官とハグしたり握手して警察学校を去ります。

警察学校の卒業式

この期間を『初任科』と言い、学生は『初任科生』と呼ばれます。

初任科生は高校や中学と同じように学年があり、『一期生』「二期生」『三期生』と入校した順番で期が上になります。

一期生から見ると三期生は神のような存在で、うかつに話すこともできません。

僕が入校していたとき、三期生の大先輩はとても大人に見えましたが実は18歳の少年だということが分かり、ビックリしたことがあります。

警察学校という環境が人を精悍に変えるのでしょう。

18歳といえば大学1年生と同じですが、世間一般の大学生では出会えないほどの凛々しさでした。

警察学校を卒業したあとは交番勤務

話を戻しますね。

初任科を卒業すると警察署に配属されます。これを警察の世界では現場に出ると言います。

警察署ではまず交番(地域課)で勤務します。

この期間は3か月あり、この3ヶ月間を職場実習と呼びます。

職場実習の間は警察官として仕事を覚えるというよりも、警察の仕事を見て現場に慣れることがメインです。

いわば見習い期間です。

警察学校を卒業した女性警察官

初任補修科生として警察学校に再び入校する

そして高卒も大卒も職場実習が終わると、再び警察学校に入校します。

要するに、警察学校には2回入校するのです。

この2度目の入校を初任補習科と言い、学校内では『初任補修科生』と呼ばれます。

初任補修科生は初任科生から見れば遥か雲の上の存在です。

現場を知っている大先輩ですから、自分が初任科生の時は目を合わせることすらできなかったのを覚えています。

警察学校の先輩警察官

初任科を卒業するとき教官と涙の別れをしたはずが、3か月で学校に再び戻ってくるというのは不思議な気分ですが現場で経験したことを同期に早く話したいのでみんなウズウズしながら入校してきます。

ちなみに教官ですが、初任科のときと同じ教官になる場合や別の教官になる場合もあります。

 

初任補修科の一番最初の授業では、教官から『現場での面白いエピソードを1人1つ紹介してくれ』と言われました。

『すべらない話』さながら、同期が経験した現場のエピソードは本当に面白くて、ネットでは言えないことばかりでした。

ちなみに僕も現場で経験した失敗談をすると爆笑されました。

この話は僕の『警察官時代のすべらない話』として今でも鉄板ネタです。

さて、初任補修科は2か月という短い期間で卒業するわけですが、ここでもしっかりと卒業試験があるので気は抜けません。

警察学校の入校期間について

実戦実習生として再び現場に戻る

初任補修科を卒業すると、次はまた警察署に戻ります。

ここで高卒は5か月間、大卒は4か月間の実戦実習期間として再び同じ警察署に戻るのですが、今度は地域課だけでなく交通課や刑事課などに配属されて現場のことを学びます。

ちなみに僕は刑事課の暴力団対策係で1か月間研修をさせて頂きました。

刑事課は交番勤務と違って日勤体制なので、朝出勤すると夕方帰ることができます。

ただ当直が週に1回あります。

当直とは泊まり勤務のことで、夕方から翌朝までの突発事案対応にあたります。

刑事課は深夜帯に事件等が入るので寝れないことも多く、仕事を全く知らない実戦実習生としては正直しんどかったです。

警察学校を卒業した後は警察署で地域課以外でも実習を受ける

実戦実習が終わるまでは見習い警察官

このように警察官採用試験に合格すると、初任科→職場実習→初任補修科→実戦実習という流れで研修カリキュラムが組まれます。(赤いマーカーを引いた部分が警察学校です。)

実戦実習が終わるまでは見習いとして扱われます。

つまり、高卒警察官は21ヶ月、大卒警察官は15ヶ月で一人前として見なされます。

ではここから、初任科が警察学校ですることや注意することに焦点をあてて説明します。

警察学校はどれくらいキツイのか?

初任科生は警察学校で警察官としての基本的なことを学びます。

具体的な内容はこちらの記事←にまとめていますので、ここでは初任科生が学校で学ぶことや注意点を説明していきます。

 

僕は以前にも動画で話しましたが、警察学校に入校する前に2か月間だけ某大手運送会社で短期アルバイトをしていました。

大きな倉庫の中でベルトコンベアから流れてくる荷物を仕分けするアルバイトで、1か月で20万円ほどバイト代がもらえましたが、とにかくきつかったです。

労災事故を防ぐために社員の人が拡声器(メガホン)で常にアルバイトに怒鳴っており、仕事から帰宅しても耳の奥で怒声が残っているほどでした。

 

このアルバイトのすぐ後に警察学校に入校したのですが、訓練を受けたときに内心、こう思っていました。

『お!警察学校もなかなかキツイねえ!』

つまり、心の余裕がありました。運送会社のアルバイトの方がキツかったのです。

警察学校の教官

警察学校に入校したばかりの頃は教官に怒られますし、上級生からもこっぴどく注意されます。

でも精神的なしんどさは運送会社のアルバイトが上でした。

苦しい経験をすれば良いというわけではありませんが、あえて苦しい経験をしたからこそ『厳しさの本質』を見抜けるようになりました。

警察官の基本を学ぶ集団生活

個人的に警察学校のキツさは怒られることや叱られることではなく、寮生活にあると思います。

僕は今まで寮生活をしたことがなかったので、警察学校に入校した時に外界と隔絶されるという恐怖を初めて覚えたのです。

普通なら仕事でミスしても家に帰れるので気持ちをリセットできますが、警察学校の場合はずっと同じ場所で生活するので気持ちの切り替えが難しいです。

警察学校の訓練期間

家に帰れない、家族や友人に会えない、外に出られないという閉鎖空間で7日も過ごすと不安がピークになります。

注意されたり怒られたり、訓練で厳しさを感じるよりも行動を制限される方が精神的にはかなり辛かったです。

せっかく警察学校に入校してもすぐ辞めてしまう人は、ここで脱落する人が多いように思います。

警察学校の入校期間で最初に何が嫌になるかを解説しています

【おすすめ記事】現役警察官に聞いた警察学校の本音

警察学校では何をするのか?

警察学校では非人道的な授業や命に関わるような危険な訓練が待ち受けている…ように思われていますが、実際はそんなことはありません。

座学の授業を受けて、術科で剣道や柔道を学び、教練という授業で盾を持って走ったり。

この何が大変だったのかというと、連帯責任という1点です。

忘れ物をしたり、貴重品を無くしたり、大きなミスをした場合は自分だけでなくクラス全員のミスになります。

警察学校に入校すると、担任の先生のような感じで教官が1人付きます。

例えば山田教官が自分の受持ちとすると、入校した日から『山田学級』の一員として生活するのです。

警察学校の教室

高校生のときは何か忘れ物をしたり、授業に遅刻してくると先生に注意されるだけでした。

でも警察学校の場合は教官に『このクラスは忘れ物をしてくる奴がいるんだな。みんなで注意してやれよ』とクラス全体が注意されるのです。

これがとてつもなく恥ずかしく、申し訳ない気持ちになります。

自分のミスでクラスの仲間全員の評価が下がるというのは人生で初めてで衝撃でした。

なので、ミスをすることが恐ろしくなってきます。

警察学校の教官

警察学校に入校すると基本的に金曜日の夜には自宅に帰ることができるのですが、大きなミスをやらかすと外出禁止という大きなペナルティを受けることがあります。

そして外出禁止というペナルティは、時に自分だけでなく連帯責任としてクラス全員に課される場合もあるのです。

警察学校という閉鎖空間から解き放たれる週末の安らぎ。

金曜の夜は学校帰りに同期とラーメンを食べて、土曜日は朝から美容院に行き温泉でリラックス。そのあとは彼女とデート。

こんな幸せなプランが誰かのうっかりミスで白紙になったら、どうですか?

これが実際にあり得るのが警察学校という場所です。

警察学校に入校している間で何がしんどいか説明しています。

では、なぜ警察は連帯責任を教え込むのか。

それは警察官ひとりひとりが『警察』という看板を背負って働く必要があるからです。

現場で市民から何か質問されたとき、誤った回答をすると警察全体が叩かれます。

間違った職務執行をすると警察が訴えられて裁判沙汰になります。

ネットでも見たことあるでしょう?

少しでも炎上すると、警察署は朝から晩まで苦情の電話が鳴りやまないのです。

現場に出て失敗すると外出禁止では済まない。それを警察学校で学びます。

警察学校では何が辛いのか

警察学校についてまとめ

ここまで読むと警察学校はとてつもなくキツイ環境に思えます。

でも、仲間と一緒に訓練で汗をかいて真面目に取り組める人は第二の青春が過ごせます。

前向きな失敗は決して叱責されません。

忘れ物や遅刻、落とし物、授業中の居眠りなど個人の注意で防げるミスに注意すればそこまで怒られることはありませんし、怒られることを委縮して小さくなるのは本末転倒です。

逃げることを考えるのではなく、成長するために入校することを意識して学校生活を満喫してください。

警察学校に入校する方へ向けた教科書を作りました。

警察官志望者に大人気の1冊です。

警察学校で何をするのかを具体的にまとめた教科書の画像

 

『警察学校に入校前、必ず読んでおくべき教科書』はこちら

 

2 件のコメント

  • 桜井さま

    若尾です。
    記事の配信ありがとうございました。
    警察学校の素晴らしさを感じました。

    仲間ほど強い絆は無いですよね。
    だから同期がいると頑張れますよね。

    最近、都道府県警察公式の警察学校youtubeを見ています。 
    皆さん必死になっていますが、ちゃんと信念ある人がたちばかりで、尊敬します。本当に「今」を頑張っている人たちばかりです。 

    もちろん教官も怖い感じがします。

    ただ、海上保安大学校のお話ですが、教官が仕事を終えて自宅で夕食時に「今日は学生に手を出して辛く当たってしまった。」と家族に話しておられ、奥さまが慰めているのを見るとしんみりきますね。教官も人間なんですよね。

    人間対人間ほど、熱くなり涙が出るもはありません。

    また記事を楽しみにしていますね。

    • 人と接する仕事で、その中でも警察官ら人の人生と大きく関わる仕事ですからやりがいはとてつもなく大きかったです。
      その警察官を育てる場所が警察学校ですから、熱量も半端ないものがありました。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    ・就職氷河期時代、3年間の公務員浪人を経て警察官採用試験に合格。 採用後は同期内最速で刑事課に引き抜かれ、代表的な出世コースに乗る。 刑事部長褒賞、地域部長褒賞、交通部長褒賞、署長褒賞など受賞歴多数。(賞状はプロフィールページに掲載) ・初任科、初任補修科を経て地域課(地域第3係)へ初任配属。 ・初任配置先の交番が高級住宅街で事件・事故の発生が毎日0件という平和な勤務地であったため、仕事が覚えられずに焦る→最多忙な交番へ異動希望を出す。 ・異動先の交番は歓楽街のど真ん中にあり、深夜でも大きな事件が発生する『不夜城』として警察24時でも頻繁に紹介される勤務先であった。 深夜2時に『10対15の喧嘩発生』という意味不明な無線を聞き、戦慄が走った思い出。 ・交番勤務時代は老若男女問わず地域住民が交番に訪れ、幹部から「行列のできる交番」と揶揄される。 ・警察官になり昇任試験に合格し、自分のやりたかった仕事も完遂して燃え尽き症候群に陥り退職。 (ちなみにプロフィール写真は巡査部長に昇進したあと、退職前に記念撮影したものです。) ・転職したとき、アラフォーながらGAFAからオファーを貰う。 ・警察官退職後は大手企業(ホワイト500認定企業)の人事課に転職、採用担当として活躍。DODAやリクナビ、エン転職など各媒体を駆使して採用率を大幅に向上させる。 ・現在も人事課で採用担当として勤務し、現役大学生からシルバー世代まで幅広く面接を行っている。 ・人事課では採用以外にも、優良子育てサポート企業として『プラチナくるみん』認定取得のために会社を構造改革中。 ・所定外労働(残業時間)を削減するため全部署の労働時間を常に可視化するツールを導入し、大幅に削減させたことから労働基準監督署の監督官から賞賛される。 ・『警察官になる前に学んだ知識』と『警察官として働いた間に蓄えた経験』『実際に人事課で勤務した経験』をミックスさせた警察官採用試験対策は1年で数十名の合格者を輩出。 ・顔出しなしの講義YouTube動画で異例のチャンネル登録者20,000人突破。 ・ツイッターは1日1回のツイート、フォロー0人でフォロワー1,000人突破。 ・40代、既婚、大阪市居住。 ・2017年から警察官採用試験対策を開始。合格実績としてプロボクサーや現役自衛隊員、転職歴多数者、元警察官、フリーター、工場勤務者など様々な経歴を持つ受験者を合格に導く。 ①『30代の女性は警察官になれない』というネット上のデマを払拭するため、30代の女性受験者を集めて合格に導いた実績 ②テレビに出演する有名な元警察官(警部級)のコメンテーターから『君は警察官にはなれないよ』と言われた受験者を合格に導いた実績 この①と②の実績を公表してネットに大きな反響を与える。 当サイトの情報をコピーペースト等して二次利用することは固く禁じておりますが、リンクはフリーですので参考になる記事がございましたらご自由にリンクを貼ってください。