警察官になりたい人へ僕が心から伝えたいメッセージ

警察、パワハラ、自殺

ブログ管理人の元警察官・桜井陸です。

読者の方から「警察官時代で一番つらかったことは何ですか?」と質問をいただきました。

僕は警察学校など何も辛くなかったですし、過酷な仕事でも辞めようと思ったことは一度もありません。

ですがたった一度だけ死を意識したことがあるので今回はその話を書きます。

 

前にも書きましたが僕は警察学校を卒業して署に配置されたものの、当初は人間関係も仕事も上手くいかずポツンと浮いていました。

先輩や上司からは「お前は自信家で生意気だ」と言われることも多く、いかに自分のキャラを確立するかを毎日考えていました。

そして自分のキャラと仕事がピッタリと合わさった時から徐々に一目置かれるようになり、花形の部署にいきなり抜擢されます。

 

その部署に入ると周りからは「おいエリート」と呼ばれるようになり、僕はどんどん調子に乗ります。

20代の巡査である僕に警部クラスの方から敬語で仕事の依頼をされることもありましたし、警部補の人が何度も僕に仕事を聞きにきたり、若手から崇拝されたり、毎日が自分に酔って勘違いしてしまうことばかりでした。

東大を出たキャリアの上司から部屋に呼ばれて「ここまで来れる警察官は一握りなんだから自信をもってください」と鼓舞され、自分はすごい人間なんだと勘違いしてしまいます。

 

調子に乗ると何故か仕事もますます上手くはかどるようになって、更に僕の特殊技能が評価されてもう一段上の花形部署に抜擢されることになりました。

ここまで来るといわゆる出世コースというやつです。

周りからは僕の経歴を見て「将来は署長だな」とからかわれることもありました。

僕の勤務経歴書は誰も見たことがない位に輝かしいもので、周囲に見せるのが自慢でした。

本当に嫌な奴でしたね。

 

ですがこの部署で僕は生まれて初めて死ぬほど辛くて苦しい経験をします。

パワハラです。

今でも当時を思い出すと胃がキューッと締め付けられます。

 

この部署に入ったとき、僕は最初とても人気者でした。

とても空気が良くてみんな仲も良く、本当に警察官になって幸せだと毎日感じていました。

それでもある日から上司Aと関係が悪くなりそこから雰囲気が一変します。

Aからはみんなの前で激しく叱責されるようになり、それが勤務開始の午前8時30分から勤務終了の午後6時まで延々と続きました。

 

僕がAから叱責を受けている間、目の前に座った上司Bは僕の目線を見逃さないようにジッと見つめてくるのでつらくなり、僕が目線をそらすとBは身体を傾けてまで僕の目線を追いかけてきます。

Aの叱責の次は別の上司からなぜ怒られたのか、今はどう感じているのかを詰問されます。

これが延々と勤務終了まで続き、みんなが帰ったあとにようやく僕の仕事が始まるので仕事はどんどん溜まっていきました。

 

毎日、朝から晩まで叱責されると人は委縮し始めて今まで出来たこともできなくなります。

目の前で一挙手一投足を監視されて、少しでも違う動作をすると全員で詰められるのです。

自信はなくなり自分は誰よりも劣った人間なんだと思うようになりました。

 

Aから

「お前はどうしていつも仕事をそんなに間違えるんだ?理由があるんだろう?」

と言われたとき、僕は

「お願いしますからみんなの前で叱責することを止めてください。原因はそれなんです。」

と言いたかったです。

 

でもそんなこと言うと

「俺たちのせいにするのか。じゃあ明日からは何も言わんから好きにしろ」

と言われるに決まっています。

 

だから僕はいつも

「すみません、僕の勉強不足です。」

と答えていました。

 

そうすると

「勉強不足?なんで勉強しないんだ?説明してみろ。やる気がないということか?」

とAに詰められ、僕が「すみません。」と答えると

「なにがすみませんなのか言葉で説明しろ。」

と叱責は堂々巡りになります。

 

そして仕事でミスをするとAに頭を思い切り叩かれるようになりました。

大人になって職場で上司から後頭部を平手でバシンと叩かれるのは衝撃でした。

上司から手を上げられるというのは想像もしていませんでしたし、恥と恐怖と悔しさが入り混じりどんどん心は離れていきます。

外回り中に僕が何かミスをするとグループメールで一斉送信されて、デスクに戻ると全員から白い目で見られるようになりました。

 

僕はこれでも頑張れば状況は変わるんだと言い聞かせて、誰にも相談することなく働き続けました。

それでも出勤すると叱責されるのは分かっているので朝が来るのが恐ろしくなり、寝ても悪夢ばかり見てとんでもなく早い時間に目が覚めるようになります。

家庭にイライラを持ち込まないようにしようと頑張っても精神のブレーキは効かなくなり、妻とギスギスし始めます。

 

やがて職場に出勤すると眠たくて目が開けられなくなりました。

何かを指示されても次々に忘れていきます。

廃人みたいになったのです。

 

そしてAと最高責任者の上司からは「お前そんなに忘れるなら脳に異常があるに違いない。脳外科に行ってCTを撮ってこい」と指示されました。

拒否するとまた叱責されるので僕は休日を利用して脳外科を受診しました。

病院で医師にCTを取って欲しいと依頼すると医師は不審者を見るような目つきで僕を見て、それでも撮影してくれました。

 

出来上がったレントゲン写真には当然異常などあるわけなく、医師から「脳もきっちり詰まっているので問題ないですよ」と言われます。

そんなの当たり前です。

分かっていたけれど受診しないと何を言われるか分かりません。

僕は「受診した」という証明だけが欲しかったんです。

CT代は5,000円でした。もちろん自費です。

 

僕はここでAに「お休み中にすみません。先ほどCTを受けたけれど異常はありませんでした」とメールを送りました。

ここまでやったんだから少しは優しくしてくれるのかなと期待していました。

そしてAからすぐに返信がきて、確認すると

「そんじゃどーすんの?」

とだけ書かれていました。これは本当にショックでした。

日本語にはこんなに短くて冷たい言葉があるのかと思いました。

 

それから数日後、僕は出勤中に駅で電車を待っているとホームに入ってくる列車を見て「いま飛び込んだら楽になれるなあ」と考えるようになります。

死ぬというよりも楽になれるという考えでした。

ここから脱却するのは飛び込むしかないと思うようになったのです。

 

その数年後、僕は配置転換することができました。

警察の良いところは部署が多いので簡単に異動できることです。

部署を変わると途端に毎日がバラ色みたいに輝き始め、周りから頼られて評価され実績も一番になりました。

 

仕事をするって、生きるってこんなに楽しかったのかと実感しました。

それでも決して天狗になることはなく生きている自分に感謝して過ごすようになります。

昇任して巡査部長になり部下ができても決して怒ることはせず、いい部分だけを探して努めて褒めるようにしました。

部下の考課表には長所ばかり書きこみました。

 

警察組織はこういう人ばかりではありませんし、必ずパワハラがあるような厳しいところではありません。

でも中にはこうやって階級が低いとか若いなどの理由で弱い立場の人をみんなで虐める人も存在します。

そして僕はもしこういう目に遭っても決して死んではいけないことを伝えたいのです。

 

僕のように頑張って警察官になった人はパワハラを受けて辞めることは想像もできません。

精神的に追いつめられると死を覚悟する人も多いんです。

だから未だに拳銃自殺する警察官が後を絶ちません。

 

僕はブログ内で「警察官になった後でも悩んだらいつでも連絡してきて下さい」と書いていたのはそういう意味でした。

そこから逃げ出してもいいんです。

昔ベストセラーになった本で「置かれた場所で咲きなさい」という本がありましたが、咲けない花だってあるんです。

枯れる前に、違うところに行けばまた綺麗な花を咲かせることだってできます。

 

詳しくは書きませんが僕は部署を異動した後、とても悲しい自殺現場に遭遇することになります。

そうか、辛かったんだよな。俺にはよく分かるんだよ。

でもお前が死んだら親はどうするんだよ。

お母さんエプロンつけたまま泣いてるじゃないか。

こんなに悲しい自殺を見たのは本当に初めてで言葉も出ませんでした。

 

僕はパワハラを受けたことを今では良い経験だったなと思いますし、当時の上司達を恨む気持ちもありません。

僕にも至らないところは多かったですし一方的に非難するつもりもないです。

ここで皆さんに当時の僕がこんなに辛い思いをしたんだよと苦労したエピソードを披露して何か同情されようとかそういうつもりも全くありません。

 

順風満帆だった僕にもそんな過去はあって脱却することができたんだと伝えたかったんです。

あの時、僕は辛い現状から逃げたから今があります。

どうしても自分に合わないと気付いたなら逃げても構わないんです。

 

もし職場等で悩んでいる人がいるなら僕は声を大にして言いたいのです。

そこから逃げ出しても良いんだよと。

人生に行き止まりはありません。

 

もういいや、もうこれでおしまいだと思っても今まで来れたんです。

ここから始まる輝かしい未来がきっとあるんです。

人生では100敗しても価値のある1勝ができれば僕は十分だと思います。

 

その1勝があなたにとって何かは分かりませんが諦めなければつかみとることができます。

頑張る必要なんてないから精一杯人生を楽しんでやりましょう。

能天気でも気楽でも今を笑えるならそれで充分だと思いますよ。

4 件のコメント

  • 辛い場面に立たされている時は
    本当に死んでやりたい
    消えてしまいたいと思うのですが
    その反面同じことを
    してはいけないと感じます。

    私も辛いことや苦しいことを
    いい経験になったと
    思えるようになりたいですね。

    • コメントありがとうございます。
      仰るとおり「自分も昔は辛いことを経験したんだから後輩や部下にも経験させる」という考え方ではなく、悪習は自分で終わりにするという考え方を持ちたいですね。

      辛かったことや苦しかったことに感謝するとその全てがプラスに作用するのでいつの日からか実践しています。
      Blueさんも近いうちにそういう日が必ずやってきますから大丈夫ですよ。

  • やはりこのような上司は居るんですね
    私も上には立つ人間になったとき、
    気をつけようと思います。
    一つ気になったのですが、部署の異動は
    ここは合っていないなと思ったらすぐに
    異動できるのですか?それとも何年かは
    居ないと異動できないものなんですか?

    • こういった上司とそれに同調する人も多いので、パワハラを見たら止める勇気を持ちたいですね。
      tomoyaさんが上に立ったときは部下の気持ちをよく考えてあげてください。

      部署の異動はすぐには無理です。
      それでも上司と話し合えば何らかの改善策はとってくれると思います。
      相談すれば年単位もかかることなく、部署によっては数日で異動できることもあるので安心してください。

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