逮捕と前科、起訴・不起訴の違いを知っていますか?

リクストリーム管理人の元警察官・桜井陸です。

今回は逮捕されても必ずしも前科がつくというわけではないという話をします。

それとあまりなじみのない起訴、不起訴という言葉も説明します。

 

とても簡単に説明しますが、知っているといざという時に役立つので参考にしてみてください。

なお、法的な言葉は漢字の連続になってしまったり難解な言葉になるのでかなりかみ砕いた表現に変えています。

逮捕には3種類ある

まず、逮捕の仕組みを説明します。

逮捕とは通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕の3種類があります。

このなかで皆さんが知っているのが現行犯逮捕だと思います。

 

通常逮捕は逮捕状を警察が持ってきて玄関で見せるやつです。警察24時でよくやってますよね。

緊急逮捕は警察官でもなかなか難しいのでここでは割愛します。

逮捕されてもすぐ刑務所にいくわけではない

一般の方は逮捕されるとすぐに刑務所に行くようなイメージがあるようで、よく勘違いされました。

逮捕は刑務所に入れるためにするものではありません。

逮捕は主に犯人が逃走する恐れまたは証拠隠滅の恐れがある場合に、捜査が難航しないよう身柄を拘束するものなのです

 

分かりやすく言うと、犯人を家に帰すと証拠品を捨てたり逃げられる可能性が高い場合に逮捕されるというわけです

なので逮捕するという意味は警察署の留置場という部屋で1日~数日監視付きで泊めて、その間に取り調べをするということなのです。

警察署には留置場という檻付きの部屋があり、そこで逮捕された人たちは留め置かれることになります。

あの大物ミュージシャンは無罪だったのか

以前、覚せい剤を使用して逮捕された大物ミュージシャンがいましたよね。

あの人は不起訴(嫌疑不十分)ということで釈放になりましたが、あれは無罪という意味ではありません。

そもそも裁判にすらなっていないのです。

 

あまり聞きなじみのない言葉を聞くと頭がごちゃごちゃになりますね。

逮捕されて不起訴で無罪って、僕も警察官になるまでは聞いたことなかったです。

先に少し難しい話をすると

逮捕→起訴→公判→判決

という順で事件は進んでいくのですが、あの大物ミュージシャンは裁判になる前に事件そのものが裁かれることなく終了してしまったのです。

起訴って?公判って?

いきなり漢字を並べると意味が分からなくなりますよね。

図を書いて簡単に説明すると

こうなります。(スマホだと字が小さくなってすみません)

 

上の図に沿って説明すると

  1.  逮捕されて警察で取り調べを受ける
  2.  警察が書類を検察庁に送る(これを送致といいます)
  3.  検察が裁判する必要性(これを起訴といいます)の有無を判断する
  4.  起訴されれば裁判(正式には公判といいます)が開かれる
  5.  裁判で実刑(罰金、懲役など)判決がでれば前科がつく。執行猶予判決でも前科となる。

 

かなり割愛しましたが、流れはこういう感じです。

 

検察とはキムタク主演のドラマ「HERO」でキムタクが演じていた検事がいる役所です。

検事が起訴すると判断すればその事件は裁判となります。

不起訴になると裁判にもならず事件終了です。

起訴されると検事は裁判官に「なぜ起訴したのか。犯人にどんな刑がふさわしいか(求刑といいます)」を説明します。

弁護士はそれに対して「その罪は重すぎる。もともとこの人は無罪だ」などと弁護するのです。

 

ということは起訴にさえならなければ前科はつかないということなのです

つまり検事は被疑者からすると最後の関門というわけです。

 

検事は起訴独占主義という権利をもっていて、被疑者を裁判にかけるかどうするか全ての最終判断を持っています。

だから起訴される前に被疑者は検事に対して少しでも良い印象を与えて起訴を免れるために弁護士を雇うのです。(冤罪事件をのぞく)

弁護士の役割は大きい

大物ミュージシャンの時は尿にお茶を混ぜたという報道がされていましたが、そのために起訴することができませんでした。

異物が混ざった尿を鑑定してもその結果を誰が信用できるでしょうか。

日本の検察が起訴するとなるとほぼ100パーセント有罪となります。

これは検察が犯罪を立証できる事件、裁判で勝てる事件しか起訴しないということを意味しています。

つまり大物ミュージシャンのように尿にお茶を入れてしまうと鑑定ができず裁判で負けてしまう恐れがあるため起訴できなかったのです。

示談ってそもそもどういう意味?

大物女優の息子も強姦事件になって逮捕された後、すぐ釈放になったのは敏腕弁護士が上手に示談して不起訴にしたのです。

(被害者がいる事件の場合、示談になればほぼ不起訴になる。)

ちなみに示談とは相手が請求する金銭を支払って解決することです

お金を払ってもらったので被害届を取り下げますという意味です。

 

被害届を取り下げたら事件がなくなるのでそこで事件終了となります。

この示談交渉も弁護士の腕にかかっており、適当に弁護士を選ぶとあとで後悔することになります。

(良い弁護士の選び方や弁護士を雇うとどうなるのか、弁護士に払う費用など詳しいことはまた今度説明します。)

 

まとめると

  1. 逮捕されても裁判で有罪判決がでない限り前科はつかない
  2. 起訴、不起訴にする判断は検事だけが持っている
  3. 起訴、不起訴に弁護士は大きな役割を果たす

となります。

 

今回は逮捕の流れを本当に簡単に解説しました。

ネットを見ても専門用語が多くて意味わからないし興味すら湧きませんよね。

法律は知らなければ本当に損するので、またこういう感じで簡単に分かりやすく説明します。

続けて【刑事になる方法と難易度の秘密】の記事へ

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ABOUTこの記事をかいた人

・就職氷河期時代、3年間の公務員浪人を経て警察官採用試験に合格。 採用後は同期内最速で刑事課に引き抜かれ、代表的な出世コースに乗る。 刑事部長褒賞、地域部長褒賞、交通部長褒賞、署長褒賞など受賞歴多数。(賞状はプロフィールページに掲載) ・初任科、初任補修科を経て地域課(地域第3係)へ初任配属。 ・初任配置先の交番が高級住宅街で事件・事故の発生が毎日0件という平和な勤務地であったため、仕事が覚えられずに焦る→最多忙な交番へ異動希望を出す。 ・異動先の交番は歓楽街のど真ん中にあり、深夜でも大きな事件が発生する『不夜城』として警察24時でも頻繁に紹介される勤務先であった。 深夜2時に『10対15の喧嘩発生』という意味不明な無線を聞き、戦慄が走った思い出。 ・交番勤務時代は老若男女問わず地域住民が交番に訪れ、幹部から「行列のできる交番」と揶揄される。 ・警察官になり昇任試験に合格し、自分のやりたかった仕事も完遂して燃え尽き症候群に陥り退職。 (ちなみにプロフィール写真は巡査部長に昇進したあと、退職前に記念撮影したものです。) ・転職したとき、アラフォーながらGAFAからオファーを貰う。 ・警察官退職後は大手企業(ホワイト500認定企業)の人事課に転職、採用担当として活躍。DODAやリクナビ、エン転職など各媒体を駆使して採用率を大幅に向上させる。 ・現在も人事課で採用担当として勤務し、現役大学生からシルバー世代まで幅広く面接を行っている。 ・人事課では採用以外にも、優良子育てサポート企業として『プラチナくるみん』認定取得のために会社を構造改革中。 ・所定外労働(残業時間)を削減するため全部署の労働時間を常に可視化するツールを導入し、大幅に削減させたことから労働基準監督署の監督官から賞賛される。 ・『警察官になる前に学んだ知識』と『警察官として働いた間に蓄えた経験』『実際に人事課で勤務した経験』をミックスさせた警察官採用試験対策は1年で数十名の合格者を輩出。 ・顔出しなしの講義YouTube動画で異例のチャンネル登録者20,000人突破。 ・ツイッターは1日1回のツイート、フォロー0人でフォロワー1,000人突破。 ・40代、既婚、大阪市居住。 ・2017年から警察官採用試験対策を開始。合格実績としてプロボクサーや現役自衛隊員、転職歴多数者、元警察官、フリーター、工場勤務者など様々な経歴を持つ受験者を合格に導く。 ①『30代の女性は警察官になれない』というネット上のデマを払拭するため、30代の女性受験者を集めて合格に導いた実績 ②テレビに出演する有名な元警察官(警部級)のコメンテーターから『君は警察官にはなれないよ』と言われた受験者を合格に導いた実績 この①と②の実績を公表してネットに大きな反響を与える。 当サイトの情報をコピーペースト等して二次利用することは固く禁じておりますが、リンクはフリーですので参考になる記事がございましたらご自由にリンクを貼ってください。