元警察官の桜井です。
今回は交通課で白バイ隊員として働く方法を元白バイ隊の警部(高田さん)にインタビューしました。
白バイ隊員に向いていないタイプや給料、やりがいも全て本音でお答えいただきました。
なお、白バイ隊員になるには『72-3』という検査があり、検査が不適なら隊員になれないとのこと。
検査内容や白バイ、交通課の話を全てお聞きしたので、交通課志望の方はぜひ全てご覧ください。
こちらの写真は高田警部が白バイ隊員時代です。
バイクはHonda(ホンダ)CB1300Pでしょうか。やはり白バイはカッコイイですね。
高田警部は警察官を拝命後、音楽隊→交通機動隊(交機隊)で白バイ隊員→交通課→鉄道警察隊→通信指令課という華々しい警察人生を経験されました。
こちらは高田警部がこれまでの功績を表彰された賞状です。その努力と信頼が伺えます。
(偽造防止のため一部修正しています)

それでは今から高田警部に音楽隊から白バイ隊員に転身した理由や、交通課の裏話をお話しいただきます。
音楽隊の白バイ警察官が教える『交通課で働く方法』とは?
私は警察官採用試験に合格して皆と同じように警察学校に入校、任官しました。
私の担当教官が若い警部補で、後々刑事部長になられた方だったのですが、その方の授業を受けている間に、段々と刑事警察に興味を持ち始めました。
後々の私の運命の分かれ道…と、なるのですが、教官から「情操係」を命ぜられて朝夕の清掃時に館内に流すレコードを持っているんなら持って来てくれないか?と、言われ、また音楽が好きならギターを寮に持ってくれば良いと言われました。
一年の間、柔道で肋骨を折るなど公務災害も有ったりしましたが…
卒業式のリハーサルをしていた時に、突然音楽隊の副隊長から電話が!?
「君、音楽隊に入ってもらう事になったから」でした。
全くの青天の霹靂、全くの阿部寛の「辞令は音楽隊」でした。
音楽隊から白バイ隊員へ突然の異動
卒配とともに音楽隊兼務でしたが、とにかく音楽隊をクビになりたくて休みの日に訓練があった時はサボったりしていました。
通常勤務は頑張ったお陰で、認められ刑事課長から「次に空きができたら刑事課に来てくれ」と言われたり、先輩刑事からは私が非番の時に「張込みに付き合ってくれ」と言われる様になりました。
大阪で開催された音楽隊全国大会に出場したのですが、何と長官賞に次ぐ大会長杯を受賞してしまいました。
全く予想していない受賞だったので、警察本部が音楽隊の運用に大きな方向転換する事となり、音楽隊員全員が市内の勤務地に異動になってしまいました。
当時、私は署内の内勤をしていて、刑事課勤務を楽しみにしていたのに…「刑事になりたい」と言う私の希望と全く違う展開になってしまい、しかも、警察官になる前に憧れていた白バイ勤務となってしまいました。
白バイ勤務を命ぜられたものの、翌年には警察署で内勤勤務を経験していた為にまたまた内勤勤務を命ぜられてしまいました。
内勤から数年後に組織改変で自動車警察隊が自動車警ら隊と交通機動隊に分けられ、再び白バイ勤務を命ぜられ…
しかし、数ヶ月後にまた内勤勤務…音楽隊兼務ですから、月月火水木金金で、殆ど休みは有りませんでした。
交代勤務員は調整して休みが有りましたが私は毎日の反則切符処理、通常事件の送致や即決裁判の立会い…
当時、両親から「1日くらい休み無いんか?」と、言われたものです。
【公式HP】白バイ隊員への道のり
毎日勤務していますから本部から目を付けられ…「指定警護員」を命ぜられ、元総理や現職総理や他の国務大臣や各党首の身辺警護も担当しました。
それも嫌がってクビになる様にサボったのに、兼務を続けさせられた結果…
後から段々音楽隊が好きになり、プロのプレーヤーと知り合ったり、県立音楽堂が出来た時に五木ひろしさんのバックバンドを務める事が出来たり、皇族が来られる際には必ず御召自動車の自動車列に参加させられたりと…
兼務の音楽隊勤務も実に楽しかったです。
そして全国警察音楽隊演奏会が催された翌年、私は22年間の音楽隊兼務から除隊されました。
その後上司の御計らいで鉄道警察隊勤務となり、7年間勤務しました。この所属は滅多に配属されないので、この7年間は良い経験をさせてもらえました。
昔から、警視庁の音楽隊は音大での方や「先生」にもなれる方が居て、昇任試験も受けずに巡査のままで満足して勤務されていましたね、音楽の演奏に階級は関係無いですからね。
私の場合は、不本意ながら兼務を命ぜられたのが22年間も兼務出来たのは本当に特別だったと思います。
どの所属に行っても完全に「音楽隊の高田」が認知されていましたから。

白バイ隊員になる方法とは?
質問1:白バイ隊員になるために試験はありますか?
回答:何処の県も同じだと思いますが、試験は無いと思います。
ただ、本人の意識とは別に「適性」は、有りますからその検査は有るでしょう。
大体は72-3と言う検査ですが、1から5までの結果が示されます。
1〜2は不適、3〜5が適性…と、言うか取り敢えず問題ないです。
因みに、私は「5」でした。
質問2:白バイ隊員になる前にバイクの免許は必要ですか?
回答:昔は、免許を持っていた者が優先みたいなことがありました。
でも今は、予算化されているので、適格者には公費で自動車学校で免許取得されるらしいです。
私らの頃とは、全く変わりましたね。
質問3:白バイ隊員になるまでに、どのような訓練をするのですか?
回答:ま、普通の体力を維持できればイイのですが…
地域課の交番勤務よりは体力的にキツイかも知れませんので、普通のエクササイズでイイと思います。
質問4:ぶっちゃけ、白バイ隊員の仕事はきついですか?
回答:ハッキリ言って、本人のモチベーション次第です。
今を踏み台に上を目指すなら頑張り、併せて勉強もしていないとダメだし…まぁ…ソコソコで…
ならばソコソコの件数を上げていればイイと思います。
でも組織の改変などで定員に減員があると、真っ先に除隊になりますね。
質問5:白バイ隊員の一日のルーティンとは?
回答:ルーティンは、ソレゾレの隊員が意識しているでしょう。
仕事始めの完熟走行や、車両点検はキッチリ済ますことは当たり前です。
自分が白バイと言うアイテムをどう使いこなすかが、大切ですよね。
質問6:白バイ隊員に向いている人、向いていない人とは?
回答:やはり、忙しない人や雑な人は向かないと思います。
自分が完璧な運転をしていながら他人の運転を見なければいけないのですから…
ソレなりに優れた人材が必要ですよね。
質問7:白バイ隊員のやりがいは?
回答:やはり、取締りの相手の方から、なかなか有りませんが…
「ありがとうございました、指摘されなかったら事故を起こしていたかも知れませんので、有り難かったです…」
なんて、言われた時なんか警告だけで済まそうと思ったくらいでした(笑)
質問8:交通課員の月間の休日数や残業について
回答:私は、音楽隊を兼務していたので、内勤時代は春から秋までの間に丸一日の休日と言うのはほぼ無しでした。
他の者と比べると休日は少なかったです。
内勤から昇任して白バイ勤務になってからは、それなりに休日は有りました。
質問9:白バイ隊員になってきつかった仕事内容は?
回答:天候が急変しても乗務しなければならない時ぐらいでした。
仕事内容は取締りもマラソンの先導も辛いことはないです。
質問10:白バイ隊員の給料は他の警察官よりも良いんですか?
回答:特にイイことはないです、
今は分かりませんが月間白バイは10,000円パトカーは5,000円の手当が付くだけでした。
交機隊の超過勤務手当は警察署より低かったです。
質問11:定年まで白バイ隊員でいられますか?
回答:他県では結構な年齢まで勤務していると思います。
ですが、やはり体力を必要とするので、各県によって見解は変わるでしょう。
質問12:警察官はプライベートでも趣味のバイクに乗って良いのですか?
回答:自家用の大型二輪でツーリングクラブを作っている者もいますし、女性でもいます。
質問13:警察官は許可なく県外に行けないと聞きましたが、趣味のツーリングで遠方には行けなくなるのですか?
回答:事前に届ければ県外でも何処でも行けます。
質問14:白バイ隊員になり、相手がオラオラ系の輩だったら怖くて違反を見逃すこともありましたか?
回答:私は、一人で車両2台に分乗した極道者8人を相手したことありますが、しっかりと運転手に違反を告知しました。
質問15:採用試験の面接で、『バイクの免許はないけど白バイ隊員を目指している』というのはアリですか?
回答:県によってや、その時代で変わるでしょう。
私の息子は自分で希望して白バイ乗務の講習を受けて、免許も取得しましたが白バイにはならずに交通課、高速隊勤務をしていました。
質問16:白バイは、他の市販のバイクに比べて早く走れるように改造しているのですか?
回答:出力等を調整していると思います。
昔の白バイはしていましたが、今は大排気量の車を使っていますから分かりません。
私が鈴鹿サーキットで緊急自動車運転指導者専科を受講した時は、私達の意見を採用してくれて以後の白バイに改良を加えてくれました。
質問17:高田さんの略歴を教えてください
回答:8歳から60歳までの42年間勤務していました。
若い時は「指定警護員」の指定を受けて、総理大臣など政府要人や、皇族の身辺警護も担当しました。
他の者とは違う勤務で、音楽隊を除隊した後に、7年間の鉄道警察隊勤務。
そして、パソコンが得意だったので通信指令室にもしばらく従事していました。
最終階級は警部です。
質問18:白バイ隊員を目指す方にメッセージをお願いします
回答:とにかく、勤務意欲は大事ですが自己の受傷事故防止を最大に努力、注意をしてください。
質問19:ちなみに、質問1の『72-3検査』とはどんな検査でしょうか?
運転免許の中期と長期停止処分者に実施する適性検査で、白バイ隊員採用予定者にも実施しています。
科捜研で1973年の3月に出来た適性検査で、1〜5の5段階で評価されるもので各項目は動作の速さ、正確性、精神の高揚抑止性、協調性、注意深さ…などが分かり、各項目毎に5段階で評価され総合評価も5段階で、1が最下位で5が最上位です。
大体何処の県も同じだと思いますが、総合評価が1と2の者は白バイ乗務させないと思います。
3、4、5なら問題ありません。結果は数字で示されて、折れ線グラフでも分かる様に表示されます。
ちなみに私は最初の21歳時の評価が5でした。
鈴鹿サーキットで研修を受けた警察緊急自動車運転指導者専科の受講時の32歳時も5評価…定年退職後の運転者教育センターの講習指導員に採用された時の63歳時でも、5評価でした。

交通課(交通機動隊含む)で働く方法まとめ
➀白バイ隊員になるには特別な試験はなく、適性検査などが実施。
➁バイク免許は配属後に公費で取得可能(所属による)
➂体力と冷静な判断力が求められる。
④やる気と安全意識を持ち、日々の訓練と責任感を大切にすることが何より重要
高田警部、インタビューにご協力いただき本当にありがとうございました。
現役女性白バイ隊員の方のコメントを最後に引用します。
重要続けてこちらの記事へ→僕が白バイ隊員の訓練を受けた本音『仕事のやりがいについて』
「悲惨な事故を1つでも減らしたい」という思いで日々勤務しています。取締中に、「白バイが走ってくれると事故が減ると思う。私たちも安心して歩けるのでいっぱい走ってください。」という言葉をいただくことがあります。
とても嬉しく、白バイ隊員として勤務していてよかったと感じます。
白バイは約350キログラムととても重いので、取り扱いにはとても苦労しています。筋力、体力トレーニングは欠かせません。
引用:三重県警公式HP
安易な答えかもしれませんが…白バイ乗務員個人のモチベーション次第だと思います。自分の取り締まりが少しでも交通事故防止に寄与出来るなら素晴らしい事だと思います。私の場合、初心から殆ど反対の方向に向かっていましたが、その時々に自分の出来ることを完全とはとても言えませんが、ソコソコ頑張っていたので42年間の現職中、22年間の音楽隊兼務、8年間の白バイ乗務、7年間の鉄道警察隊勤務、警護対象者の身辺警護業務…色々な方々と知り合い、交流する事が出来て、楽しい勤務をする事が出来ました。