警察官は真面目な人は向いてないのか。警察官はコミュ障だとなれないのか。警察官は体力がないと向いていないのか。
警察官採用試験対策を始めて早3年になるが、これまで色々な相談が寄せられた。
ひとつ言えるのは『警察官だから〇〇である』という固定した答えはないということだ。
僕が採用試験を受験したのは就職氷河期時代で、警察官志望者の中には若い新卒から年を重ねたフリーターが混在していた。
公務員予備校のトイレは公務員浪人の泣き言とため息が充満し、授業の合間に用を足すだけで陰鬱とした気分になった。この中の誰が合格するのか分からないけれど、この光景を見る限りでは自分も含めて誰も警察官になれないんじゃないかと思うほど異様な光景だった。
仕事を求めてとにかく公務員を目指す人も多く、予備校生の中には痩せて背が低く神経質そうな青白い顔をして、いつも一人で勉強している年配の男性がおり、僕は内心で失礼ながら「ああ、この人はきっと警察官には向いてないだろうな」と感じていた。
そして僕は警察官になり、警察本部に書類を届けたとき一人の男性とすれ違った。なんと公務員予備校時代に僕が見た神経質そうな受験生だった。
僕と目が合うと相手も立ち止まり、「あ、予備校でお会いしましたよね」と声をかけてくれた。僕はなんて声をかけて良いのか分からず「お互い合格できて良かったですね」と言った瞬間、彼は「苦労しましたね。お互いに」とニッと笑った。
警察官から公務員浪人に戻った瞬間はあれが最初で最後だったけれど、当時のアンモニア臭が充満した掃除もされていない予備校のトイレや授業が終わり辟易としながら歩いて帰った暗い夜道、教科書の重みで変形した手作りのおにぎりを食べるときの虚しさ、全てがフラッシュバックして気恥ずかしい気持ちになった。
警察本部の磨かれた大きな窓から差し込む午後2時の夏の光はクールビズの彼に強烈に反射して、細くて小さな体と青白い顔を余計に強調した。
それから彼に会うことは一度もなく、お互い名前も知らないままだけれど彼に出会った瞬間は今でも鮮明に焼き付いている。
彼が言った「苦労しましたね。」の言葉の重さは計り知れないが、身体が小さくても弱々しく見えてもどれだけ倍率が高くとも初心を貫く熱い気持ちを持ち続ければ弱点は凌駕できるんだと感じた瞬間だった。
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