ブログ管理人の元警察官・桜井陸です。
今回の記事では警察官として最もポピュラーな部署である地域課(交番勤務)について分かりやすく説明します
まず警察の仕事は何が大変かというと通報現場での対応で、時には初対面の人からいきなりとんでもない相談を受けて瞬時に判断することを求められます。
そこで今回は地域課の仕事内容について実体験を基に詳しく説明します。
地域課の仕事内容って?
まず地域課の仕事は交番勤務を通じて発生した全ての事案に対応することです。
警察学校を出るとまずはこの地域課で交番勤務からスタートです。
つまり警察官になると最初は絶対に地域課で働くことになります。
勤務時間は午前10時頃から翌日の午前10時頃まで約24時間交番に泊まり込みで勤務します。
その間に落とし物から迷子、巡回にパトロール、ケンカに万引き、交通事故から交通取り締まりなどあらゆる仕事を担当します。
【公式HP】警視庁:地域警察
110番通報を受けると現場に急行する必要があるので管内の地理は覚えておく必要があります。
そのため方向音痴だと少し苦労します。
僕は新人の頃、仕事帰りに自分の受け持ち区を歩いて主要な場所を覚える練習をしていました。
勤務時間と勤務内容について
交番の警察官の勤務時間と勤務内容についてこの図をご覧ください。
警視庁や群馬県警などが公表しているものをベースに作成しましたが、大体どこもこのような感じです。
かなりざっくりしていますが、交番で働くと一日がこのようにあっという間に過ぎます。
この表を見ると午後1時から巡回連絡と書いていますが通報が入った場合は事案対応が優先ですし、休憩中に通報が入っても対応しなければなりません。
つまり何が起こるか分からないので常に気持ちはピリピリしています。
もし午前0時に重大事件が入れば翌日の昼まで事案処理にかかることもあります。
スケジュールなどあってないようなものが地域警察の仕事で臨機応変に対応する力が求められる部署なのです。
交番の仕事は何がきついのか?
世間で警察官の仕事は何がしんどいか、イメージで聞いてみると恐らく警察学校の訓練や交通取り締まりが挙げられるのではないでしょうか?
確かに最初はしんどいですが慣れたら余裕でした。
それよりも大変なのは現場です。
現場の何が大変なのかというとケンカや揉め事で大炎上している現場を鎮静させる作業なので、何が起こるか分からないのです。
街中で喧嘩している人がいれば遠巻きに見て通報したり、巻き添えを喰わないように立ち去るのが普通ですよね?
そのケンカを止めるのが地域警察官です。
時には手錠をはめて連行することもあります。
深夜にいきなり通報を受けて大炎上する現場に飛び込むんです。
何が起きているのかも分からないし誰がいるのかもほとんど分からない。
怖いですよ。
現場は何が起きるか分からない
ケンカって最初は口論から始まって徐々に白熱していきますよね?
普通はそこで収まるのですが、どうにも怒りが収まらないケンカは殴り合ったり刺したりするわけです。
警察官はその怒りが最高潮に達した現場にいきなり突撃して、仲裁して話を聞いて、事件性があれば逮捕します。
【警察官は本当に危険な仕事なのか?】の記事はこちら
ケンカしている人もいきなり警察官が来るから「関係ないポリは引っ込んでろ!」と怒るわけです。
考えたら当然ですよね。
ケンカになった流れや事情も知らない人に仲裁されたら腹が立つのは人間として当たり前の感情です。
地域課の警察官に必要なこと
中には刃物を持っている人もいます。
安い包丁でも危害を加える意思を込めて握りしめられた刃物って恐ろしいんです。
「あれを振り回されて目に入ったら失明するなあ」と説得しながら思ったこともあります。
そこでいきなり拳銃を撃つわけにもいきませんし制圧するのも危険なので大切なのは交渉術、つまりコミュニケーション能力なのです。
ケンカする人ってほとんどが途中で怒りが醒めているので、あとは落としどころを警察官が用意してあげるのも大切な役目です。
検事も裁判官も弁護士も、事件のあとに対応する仕事です。
荒れる現場に飛び込んで場を諫(いさ)めるのが地域警察官なのです。
やりがいを感じる瞬間
例えば交通取り締まりでも世間のイメージ的に違反者に暴言を吐かれてメンタルがやられるんじゃないかと思われているのではないでしょうか?
でもケンカの現場に比べたら交通取り締まりで文句を言われても何ともないのです。
しかも揉め事現場を収める話術を持っていれば交通取り締まりで文句を言われることはほとんどありません。
興奮がMAXになっている通報現場に飛び込むのは勇気もいりますが、場を収めると本当に気持ち良いです。
ケンカする大人同士を仲裁して仲直りさせることって警察官しかできない経験だと思います。
「ありがとうございます」と頭を下げられたとき、大変だけどやりがいは本当に感じる瞬間でした。
女性警察官に危険は?
そして女性警察官は危険な現場で前衛に立たされることはまずないです。
警察官に怪我をさせると大変なので、喧嘩等の現場で女性警察官は被害者や女性の保護・事情聴取が主な任務です。
被害者も女性警察官の方が安心できるので役割分担がちゃんと決められています。
ちなみに僕が在職中、女性警察官が怪我をするのを見たことは一度もありません。
ケンカ等の危険な現場に向かう時は上司がメンバーを采配するので制圧・鎮圧は男性警察官が行います。
ここで女性警察官に大切なことは傍観することなく率先して行動する姿勢です。
サポート役とはいえ後衛という立場に甘んじることなく前向きに働く姿勢はかなり評価されます。
巡回連絡って何するの?
あとは地域警察官の仕事で巡回連絡があります。
巡回連絡は本当に楽しかったです。
各家庭を回って不安なことや相談がないかを聞いて回るんですが、これこそが警察官の仕事だと感じていました。
インターホンを押すとみんな喜んで玄関に来てくれます。
警察官になる前、僕はサラリーマンだったので飛び込み営業で門前払いされていた当時をいつも思い出していました。
訪問するだけで喜んでもらえる仕事は他にないと思います。
天気の良いお昼に散歩がてら歩いて巡回して、相談を聞いたり世間話する中で「警察官になって良かったなあ」としみじみ思いました。
世間話するだけでも住民には安心感を与えられるので大切な仕事なのです。
そして時には「裏の公園に深夜になると高校生がたむろして怖いんです」と相談されれば実際に深夜、公園をパトロールして異常を確認します。
感謝されることが多い
こうして相談を解決すると次に巡回したとき本当に喜んでもらえます。
地域課は「ありがとう」を言われることが非常に多い仕事でした。
落とし物を受理して連絡するとみんな喜んで引き取りにきますし、迷子や迷い老人を保護して引き渡したときも感謝されます。
交番の雰囲気について
交番の職場環境はどんな感じかというとサークルや部活みたいな感じでした。
若い巡査と中堅・大御所の幹部が朝から翌日の昼まで働くので自然と関係が深まります。
新人のときは嫌だったんですが、2年もすれば後輩もできて頼られる存在になり職場に行くのが楽しくなるんです。
人間関係は重要
当直明け(仕事終わり)はお昼前なので、帰り道に交番の人とお酒を飲んだり食べ放題の焼き肉や焼き鳥を食べたりして太る人も多いです。
職場の人と仲良くなるのが苦手でドライな人間関係を求める人には少しキツイかもしれませんが、仕事仲間が欲しい人は地域課は最適です。
だから若い巡査は地域課から内勤に異動するのを嫌がる人も多いです。
あと交番勤務は色々と備品を揃えるのが楽しかったです。
例えば夜でも街頭活動しやすいように100均で小さなLEDの懐中電灯を買ったり、靴の臭いを消す用にネットで消臭剤を買ったり、肌が乾燥しないように洗顔セットや美容グッズを交番のロッカーに揃えていました。
交番の働く環境について
特に交番で化粧水を顔に塗っているときは「意外と警察って自由なんだな」と感動したのを覚えています。
軍隊みたいな組織を想像していたんですが、いざ警察官になって現場に出ると働きやすくて驚きました。
事件は突然入るのでメリハリは必要です。
それでも常にピリピリした雰囲気ではなく、働くときは働くけど休む時は休むことができるのは良い環境でした。
職務質問や交通違反の取締りは街を変える
地域課は自分の受け持ち区を与えられて、受け持ち区を管轄する交番で働きます。
そこは自分のフィールドなので何をしても自由です。(新人の頃は無理ですが)
徹底的に交通取り締まりをしたり、職務質問をして犯罪を減らすと受け持ち区に愛着が湧きます。
愛着が湧くころには地域の顔になっているので、このときこそ「地域課」として本当のやりがいを実感する瞬間です。
住民にも顔を覚えてもらって「お巡りさん」ではなく「〇〇さん」と名前で呼ばれたり、指名されて相談を受けることもあります。
社会貢献が仕事になる
警察官を目指す人はほとんどの人が「人の役に立ちたい」という気持ちがあるはずです。
言葉や文字にするのは難しいけれど、「お金のために働くんじゃなくて人のために働きたい」という漠然とした思いがあるはずです。
そしてやりがいはあってこのように給料も良いだけじゃないので本気で警察官に憧れる人は天職だと思います。
社会貢献がしたい。人のために働きたい。
その願いがダイレクトに伝わる仕事が警察の中でも地域課という仕事でしょう。
警察学校を出ればほとんどの人は地域課に配属されます。
つまり上記のような仕事を任されるのです。
だからこそ必要なのは体力や責任感はもちろん、交番の仲間や住民と円滑にコミュニケーションがとれる人柄なのです。
地域課(交番勤務)が向いている人
ではここで交番勤務が向いている人について詳しく解説します。
最初に説明したように地域課は警察学校を卒業して一番最初に勤務する部署です。ここで電話の取り方や切符の切り方、地理案内や少年補導などを学びます。
地域課でも2種類の警察官がいて、活躍できる人と活躍できない人。これは同じ警察官でも給料から昇進スピードまで警察官として働く上で全て異なるのです。
制服の警察官はみんな一緒に見えますが、実は人によって大きく違います。交番勤務というのは広い街の一つのエリアを守る仕事です。
自分の管轄は何があっても守り抜く必要があるのですが、仕事内容は基本的に自由です。
つまり、最低限言われたことだけやって給料を貰うという『THE・公務員』という働き方でも、自分のやりたいことを自由にやって結果を出すのも自由なのです。
もうお分かりのように、先ほどの『活躍できる人』とは積極的に仕事をドンドンやって結果を出す人のことです。
警察の仕事はノルマなのか?
世間ではよく『警察官は切符を切るのがノルマ・職務質問するのがノルマ』と批判されますが、逆に言うと切符も切れない、職質もできないと警察官として働く意味がないんですね。
交番で仕事が終わるまで24時間ボーっと過ごして勤務を終える警察官が果たして警察官と言えるのかなと現職時代から思っていました。
そして実際に切符を切らなくとも、職質も少年補導も巡回もしなくとも公務員なので給料はもらえます。
警察官として交番の中に存在するだけで給料はもらえるのです。
民間から転職して警察官になると働かなくとも給料がもらえるという実態を見て衝撃を受けると思います。
民間では少しでも利益を上げるために働いて数字を上げなければ評価は下がり、給料もボーナスも下がります。
公務員は努力しなくても給料を貰えますし、何なら努力しても給料に大差がつかないので努力することが馬鹿らしくなるのです。
警察は努力した人を評価して表彰したり内勤に異動させたり昇進試験で優遇しますが、警察の仕事に興味のない警察官にすれば表彰も内勤も昇進も興味ありません。
給料さえもらえれば周りから何を言われても良いと割り切って働ける人は『活躍できない人』として警察人生を終えます。
地域課の警察官は給料も高い
ちなみに僕が警察官になって初めて交通違反の切符を切った時、こんなに簡単な仕事で高い給料を貰えるんだという衝撃に包まれました。民間の仕事に比べて遥かに仕事内容は簡単です。
同級生(大卒)と比較しても僕の方が高かったです。地域課なら各手当を含めれば大手企業クラスの給与は貰えるのです。
民間は営業をする場合、まず自分が誰かを明確にして相手に信用してもらい、そこから人間関係を構築して自社の商品を買ってもらいます。
警察は世界中の誰もが知っている職業なので初対面の相手にも絶対に信用されます。
地域課の警察官が民間に比べて楽な部分
名刺を配らなくとも自分の仕事内容を理解してもらえます。こちらが声をかけても精神的優位に立って交渉できます。こんなに楽な営業は民間ではあり得ないんです。
いきなり話しかけてカバンの中身を見たり、トランク開けたり、普通の仕事ではあり得ないでしょう?
駅前のキャッチセールスなんてほとんど無視されているのに、警察官は声をかけたら相手は100%立ち止まって話を聞いてくれます。
僕は元々営業していたので、制服の絶大な威力に驚きました。警察官の武器は拳銃でも国家権力でもなくて社会的信用性なんです。
警察官は公務員ですが実力主義です。頑張ったら給料は上がりますが何もしないと最低限の給料しかもらえません。
最低限の仕事しかしない人はクビにはなりませんが周りの評価も低いです。
最低限の仕事しかしない人は自分が出来ることしかやらないし、挑戦しない。じゃあどうなるかと言えば自分の出来ないことが発生すれば逃げるしかなくなるんです。一回逃げると逃げ癖がついてまた逃げるしかなくなる。そうすると次も逃げるしかない。
周りもみんなそれを見ているんで『あいつまた逃げたな』と思われて相手にされなくなります。
そうすると仕事はできないし、人間関係も最悪で働くのが苦痛になります。
警察官の仕事は無線で周りがみんな聞いているので、事案から逃げた時はすぐにバレます。
ややこしい事案や難しい事件が発生したとき、真っ先に現場に向かう人と逃げる人は無線を聞いていればすぐに分かるのでダイレクトに評価につながります。
仕事から逃げると何をすれば良いのか分からなくなるので、これまで逃げ続けた定年間際の人が若手警察官に仕事を聞く光景を見ることがあります。
地域課の仕事内容が楽な理由
公務員というぬるま湯にドップリ浸かると出られなくなります。働いても働かなくても給料が貰えるなら働くのはバカらしい。こういう考え方を少しでも払拭するために警察の偉い人は頑張った人を表彰したり、階級を上がりやすくしたり、仕事を点数化しているのですがそれでも働かない人は働きません。
仕事を点数化することを世間では『ノルマ』と呼びます。どれだけ仕事したのかを具体的に評価するためです。警察が仕事を点数化しているのは働かない警察官に最低限働いてもらうためなのですが、これがなければまともに働かない警察官がいるというのもどうなのかなと思います。
そして地域課の大切な仕事内容の一つ、巡回連絡などインターフォンを押して悩みを聞いたり世間話をして地域住民と仲良くなるだけの仕事なのに、これのどこが嫌なのか理解できませんでした。少年補導など今でもやりたいほど楽しかったです。悪ガキも最初は制服の警察官を警戒しますが、中身は子供ですから信頼関係ができるとこちらをあだ名で呼んで甘えてくるようになります。
少年と仲良くなるためには機械的に仕事をするのではなく、相手の名前や家族構成、趣味など全て把握して正面から向き合えば必ず仲良くなれます。
不良少年は媚びると舐められますし、頭ごなしに叱ると牙を剥くので最初はどうすれば良いのか分からなかったのですが多くの少年と会話する内にどうすれば人間関係が作れるのかがようやく理解できました。
どういうことかというと、少年は自分を理解してくれる大人を信用するのです。だから初対面のときに聞いた会話内容は全てメモして暗記していました。そして次に会ったときに名前を呼ぶだけでも少年は驚いて喜びます。
『交番の警察官が俺のことを知ってくれてる』
こんな単純なことでも少年と信頼関係は結べます。不良少年が多い地区だと20人以上になるので最初は名前を覚えるのに苦労しましたが、民間ではもっと苦労しました。
それくらいの努力ができなければ民間ではお金を貰えないのに警察官は不良少年の名前を覚えるだけで仕事になるのです。
悪さをする少年は大体が同じメンバーなので関係作りさえできてしまえば仕事がとても楽になります。
地域課の警察官に向いている人
巡回連絡や少年補導だけでなく、地域警察官は酔っ払いの対応や迷子・徘徊老人など色々な事案に対応します。このいずれも逃げることなく積極的に対応すればすぐに慣れることができます。
【警察官時代の小話】
僕も最初は酔っ払いの対応で何を話せば良いのか分からなかったのですが、1年もすればあしらいが上手になりました。
ある時に図書館で本を読んでいる時に『スナックのママは酔っ払いの対応が上手い理由』という話があり、その中で
『店では他のお客さんがいるので泥酔したお客さんに注意したり無理に帰らせると空気が悪くなる。更に酔っ払いも泥酔して理性がないので怒りやすく危険。
だから知り合いの60代のママは『はいはい、私のパンツ見せてあげるから帰ろうね。いい子だね。』と笑いに変えて無理やり店の外に連れ出して強引に帰らせるのが非常に上手い。酔っ払いは真剣に注意しても理解できないし逆上するだけだからこちらのペースに上手く乗せるテクニックがあるんだなと脱帽した』
という話を読んで、これが酔っ払いの対応のコツなんだなと理解したのです。
実際、泥酔して何度も同じ話を繰り返す酔っ払いはこちらのペースに乗せればトラブルを起こすこともなく対応できました。
地域課の警察官は色々なことに遭遇します。
でもどんな事案が起きても逃げることなく対応すれば難しいことはありませんし、仕事は予想より簡単に覚えられます。そのためには公務員だから頑張っても頑張らなくても同じという考え方を捨てて努力する必要があります。
交番の仕事に慣れてくると5年もすれば通報が面倒に感じ、対応を後輩に任せてサボり癖がつきます。無線が鳴るたびに緊張して現場に向かっていたのも忘れて『THE・公務員』になってしまうのです。
つまり地域課が向いている人というのは警察官として当たり前の仕事が率先して出来る人なのです。
僕は警察官に憧れてます。
交通違反の取り締まりを積極にやりたいです。
一枚でも多くの違反を見つけて切符と反則金を課すのが夢です。交通マナーの向上に努めたいです。
制服を着ての取り締まりももちろんですが、少し汚いかもしれませんが抜き打ち隠れての取り締まりとかもやらせてもらいたいです。
自分的にはノルマというものには否定的ではありません。
交通取り締まり警察官の本音を是非聞いてみたいです。
ノルマというよりも取締りは『警察官ならばやって当然の仕事』ですので、汚いと感じることはありませんよ。
違反者から批判されても交通上の危険を除外するために無くてはならない仕事です。